実家を兄弟でどう分ける?|遺産分割の4つの方法と協議書の作り方

親が亡くなり、残った財産の大半が実家という方に

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預貯金はわずかで、残ったのは実家だけ。兄は「このまま住みたい」、妹は「売って分けたい」と言い、話が進まない。そんな家で兄弟が分け方を決めて書面にするまでを、民法の条文と裁判所・法務省・国税庁の案内に沿って書いています(参照日は末尾の情報源に記載)。

遺言書・相続人・借金の調べ方と相続放棄の期限は「親が亡くなったら相続で最初に調べること」、葬儀・お墓・相続の準備の全体は「終活の始め方」にあります。

先に結論

→ 分け方4種類の比較表を見る

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分け方を決める前に確認すること

兄弟で「誰が実家を取るか」を話す前に、遺言の有無、相続人と法定相続分、財産の一覧と実家の価格の3点を全員でそろえておきます。

遺言があるか

親が遺言で相続分(誰がどれだけ受け取るか)を決めていれば、法律で決まった割合(法定相続分)より遺言が優先されます(民法902条)。京都家庭裁判所の案内では、有効な遺言書で分け方が決まっている遺産は原則として遺産分割が要らず、遺言に書かれていない遺産は話し合いで分けます。

遺言で取り分が大きく偏っていても、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(最低限受け取れる割合)があります。子が相続人のときの遺留分は、遺留分を計算するための財産の2分の1に、各自の法定相続分を掛けた割合です(民法1042条)。

足りない分は、多く受け取った人にお金で請求する仕組みです(民法1046条)。

遺言書の探し方は「親が亡くなったら相続で最初に調べること」の調べる順番の章、法務局に預けてあった遺言書の受け取り方は「親の自筆の遺言書を法務局に預ける手順」の亡くなったあとの章で説明しています。

相続人は誰で、法定相続分はいくらか

遺言がなければ、法定相続分が話し合いの出発点になります(民法900条)。親が亡くなった場面でよくある組み合わせは次の2つです。

相続人法定相続分例
もう一方の親(配偶者)と子配偶者が2分の1、子が2分の1(子が複数なら2分の1を人数で等分)母と子2人なら、母2分の1、子は4分の1ずつ
子だけ(両親とも亡くなっている)子の人数で等分子3人なら3分の1ずつ

※父母の一方だけが同じ兄弟姉妹がいる場合など、ほかの組み合わせは民法900条で割合が変わります。相続人の確定のしかた(戸籍の集め方)は「親が亡くなったら相続で最初に調べること」で説明しています。

財産の一覧と、実家のおおよその価値

実家・預貯金・株・保険など、何がどれだけあるかを一覧にします。実家の「価格」には種類がいくつもあり、どれを使うかで代償金の額や取り分の見え方が変わります。

価格の種類誰が・何のために出すかどこで分かるか
不動産会社の査定額不動産会社が、売れそうな価格の見込みとして出す不動産会社に査定を頼む(会社によって額が違う)
固定資産税評価額市区町村が、固定資産税を計算するために決める毎年届く課税明細書の「価格」「評価額」の欄
相続税評価額相続税を計算するときの評価。路線価が付いた地域の宅地は、路線価(道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額)を基に計算する国税庁の路線価図などを使って計算する
公示価格(地価公示)国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点の標準地の価格を3月に公表する国土交通省の地価公示の公表資料

京都家庭裁判所の案内では、調停で不動産の金額を決めるときは、基本的に当事者が合意した金額で進めるとされ、決め方の例として固定資産税評価額・相続税評価額・公示価額・不動産業者の査定額が挙げられています。合意できなければ鑑定をします。

代償分割では、実家を高く見れば受け取る側に、低く見れば払う側に有利になります。たとえば固定資産税の課税明細書と不動産会社の査定書を兄弟全員の手元に用意し、2つの額の差を確かめるところから始めます。

もう一方の親が健在なら、実家をどうしたいかを今のうちに聞いておけます(聞き方は「親が元気なうちに聞いておくこと」)。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、相続で空き家を取得した世帯の77.0%が相続前に特に対策をしておらず、対策で最も多かった「被相続人との話し合い」も16.7%でした。

出典:e-Gov法令検索「民法」第900条・第902条・第1042条・第1046条、京都家庭裁判所「遺産分割調停」のQ&A(Q5・Q12)、国税庁 No.4604「路線価方式による宅地の評価」、国土交通省「地価公示」、国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」p.30(いずれも2026-11-04参照)

実家の分け方4種類(比較表)

裁判所(京都家庭裁判所の案内)は、遺産の分け方を現物分割・代償分割・共有分割・換価分割の4通りに整理しています。実家に当てはめると次のようになります。

分け方どんな分け方か当てはまりやすい状況の例注意点
現物分割実家は兄、預貯金は妹のように、財産ごとに取る人を決める実家と同じくらいの額の預貯金など、ほかの財産がある財産の額に差があると、取り分がそろわない
代償分割実家を取得した人が、ほかの兄弟にお金(代償金)を払う住み続けたい兄弟がいて、代償金を用意できる払う人に資金が要る。実家をいくらと見るかで代償金の額が変わる
換価分割実家を売って、代金を分ける誰も住む予定がない。取得したい人がいても代償金を払えない売るには相続人全員の協力が要る。売れるまで時間がかかることがある
共有兄弟の共有名義で実家を持つすぐには売る・住むを決めず、兄弟で持っておくことに全員が合意している後で実家全体を売ったり建て替えたりするには共有者全員の同意が要る(民法251条)。共有にしたあとに起きることは次の章

※「当てはまりやすい状況の例」は、京都家庭裁判所の案内(代償分割は払う人に資力が要る、換価分割は取得したい人がいない・代償金を払えない場合などに選ばれることがある)をもとにまとめたものです。

税・費用の面で確かめておくことは次のとおりです。

分け方税・費用で確かめること
現物分割実家の宅地に小規模宅地等の特例を使えるかは、取得する人で要件が変わる(国税庁 No.4124)
代償分割代償金は相続税の計算の中で扱われる(国税庁 No.4173)
換価分割売った利益(譲渡所得)の申告が、代金を受け取る各相続人に関係する
共有固定資産税・修繕費を誰がどう負担するかを決めておく(1人が住む場合の対価は次の章)

1つの方法だけを選ぶ必要はありません。実家は売って、預貯金は現物で分ける、という組み合わせもできます。

現物分割:実家と預貯金などを分けて取る

実家以外の財産がある程度あるときに使えます。実家の額のほうが大きく取り分がそろわないときは、その差を代償金で埋めると、現物分割と代償分割の組み合わせになります。

代償分割:住み続ける人がほかの兄弟にお金を払う

京都家庭裁判所は、この方法では代償金を払う相続人に、払うだけの資力がなければならないとしています。代償金の額は、実家をいくらと見るか(前の章の価格の種類)で決まり、決めた額と支払期日・支払方法は遺産分割協議書に書きます(書く項目)。

国税庁の No.4173 によると、遺産分割で代償分割をした場合の相続税の課税価格は次のように計算します。

代償金を現金ではなく、払う人がもともと持っている土地などで渡す場合は、渡した人がその時の時価で売ったものとして所得税がかかります(No.4173)。金額の決め方や税の扱いは事情で変わるため、税務署か税理士に確認してください。

換価分割:売って代金を分ける

実家を売って、その代金を兄弟で分けます。売るまでには、相続登記・不動産会社選び・売買契約・引き渡しと、相続人全員の協力が要る場面が続きます。

誰が不動産会社とのやり取りを担当するか、いくら以上なら売るかを、先に兄弟で決めておくと進めやすくなります。

売ったときの税について、国税庁の質疑応答事例は次のように説明しています。

  1. 売る時点までに、代金をどの割合で分けるか決まっていれば、その割合で各相続人が譲渡所得を申告する
  2. 決まっていなければ、法定相続分で申告する
  3. 売ったあと、所得税の確定申告期限までに代金を分け、全員がその割合で申告すれば認められる
  4. 申告期限までに分けていなければ、後で分け方が決まっても、それを理由に申告を直す(更正の請求)ことはできない

売る前に、代金を分ける割合を遺産分割協議書で決めておくと、申告の割合で迷わずに済みます。

相続した実家(空き家)を売ったときの特別控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の一つで、話し合いが長引くと先にこの期限が来ます(2024年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上なら上限2,000万円)。

ほかの要件は「実家が空き家になったらどうする」で確かめ、使えるかは税務署か税理士に確認してください。

仲介で売るか、不動産会社に直接買い取ってもらうかの比べ方は「相続した実家は仲介と買取どっち?」で説明しています。

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仲介で売り出した場合の価格を知りたいときは、ミライアスのスマート仲介に仲介の査定を申し込めます。この記事から案内する査定の申込みは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の物件だけが対象で、市街化調整区域にある物件は対象になりません。

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※対象エリアは、ミライアス公式ページ「スマート仲介売却」のよくある質問で、一般の居住用不動産の取扱いを東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県としている記載とも一致します。

市街化調整区域の物件が対象にならない点は公式ページの記載ではなく、この記事から申し込む場合の条件です(2026-11-04参照)。

出典:京都家庭裁判所「遺産分割調停」のQ&A(Q16)、国税庁 No.4173「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」、同 質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」、同 No.3306(空き家の特別控除)、同 No.4124(小規模宅地等の特例)(いずれも2026-11-04参照)

共有のまま置いておくと起きること

京都家庭裁判所は、共有分割について、将来共有者の間で管理や処分の意見が食い違ったときに問題が生じる可能性があるので、選ぶときは注意が必要と案内しています。

遺産分割前の共有と、分割後の共有名義は別の状態

親が亡くなってから遺産分割が済むまでは、相続人全員で実家を共有している状態です(遺産共有)。この段階で分け方を決める手続は、遺産分割(兄弟の話し合い→家庭裁判所の調停・審判)です。

遺産分割で「兄弟の共有」と決めて登記したあとは、通常の共有になります。この段階で分けるには、遺産分割ではなく共有物分割(民法258条)という別の手続になります。

売る・建て替えるには共有者全員の同意が要る

民法251条1項は、共有物に変更を加えるには、ほかの共有者の同意が要ると定めています(形や効用を大きく変えない軽い変更は除く)。兄弟のうち1人が反対していると、実家全体を売ることも建て替えることも、話し合いだけでは進められません。

法務省の改正解説も、共有者の1人の所在が分からないだけで不動産全体を売却できなくなる例を挙げています。

自分の持分だけを売ることは別の扱いです。話がまとまらないときの裁判所の手続(共有物分割)は下で説明します。

共有者の1人が実家に住んでいる場合、別に取り決めがなければ、その人は自分の持分を超えて使っている分の対価を、ほかの共有者に払う義務があります(民法249条2項)。

共有にするなら、誰が住むか、固定資産税や修繕費を誰がどう負担するか、いつ・どう分けるかを、兄弟で書面にしておくと後で話を戻しやすくなります。

次の相続で持分がさらに分かれる

共有者の1人が亡くなると、その人の持分は、その人の相続人(配偶者や子など)に引き継がれます。兄弟2人の共有だった実家は、たとえば2人の持分がそれぞれの子(甥や姪)2人ずつに引き継がれると4人の共有になり、売るときに同意をもらう相手が2人から4人に増えます。

共有者どうしで分け方の話がまとまらなければ、裁判所に共有物の分割を求めることができます(民法258条)。裁判所は、現物を分ける方法や、共有者の1人に持分を取得させてお金を払わせる方法を命じることができ、そのどちらもできないときや価格が大きく下がるおそれがあるときは、競売を命じることがあります。

もう一つの10年:遺産共有の持分も共有物分割で分けられるようになる

遺産分割が済んでいない実家の持分は、原則として共有物分割の手続では分けられません。ただし相続開始から10年を過ぎると、共有物分割の手続で分けることを裁判所に求められるようになります(民法258条の2)。

このとき、ほかの相続人が遺産分割を請求していて、共有物分割に異議を出せば、その手続は使えません(異議は裁判所から通知を受けた日から2か月以内)。細かい扱いが分かれる規定なので、当てはまりそうなときは弁護士に相談してください。

出典:e-Gov法令検索「民法」第249条・第251条・第258条・第258条の2、法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」、京都家庭裁判所「遺産分割調停」のQ&A(Q16)(いずれも2026-11-04参照)

遺産分割協議の進め方と「10年」で変わる取り分の計算

遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いです。民法907条は、共同相続人はいつでも話し合いで遺産の全部または一部を分けることができ、まとまらないときは家庭裁判所に分割を請求できると定めています。

相続人全員が参加する

話し合いには相続人全員が加わります。相続人の中に、認知症などで判断能力が十分でない方がいる場合について、京都家庭裁判所は、成年後見制度を利用し、選ばれた成年後見人などがその相続人に代わって遺産分割に参加すると案内しています。

行方の分からない相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があり、選ばれた管理人が遺産分割に加わるには、さらに家庭裁判所の許可が要ると京都家庭裁判所は案内しています(どの手続が合うかは家庭裁判所や弁護士に確認してください)。

どちらも話し合いの前に家庭裁判所の手続が要ります。後見制度の種類と選び方は「成年後見・任意後見・家族信託の違い」で説明しています。

遠方の兄弟、連絡を取りにくい兄弟とのやり取り

話し合いは、全員が一か所に集まらなくても進められます。電話やオンラインで内容を詰め、まとまった遺産分割協議書を郵送で回して、1人ずつ署名と実印の押印をしてもらう方法があります。

提出先(法務局・金融機関など)で求められる形が違うことがあるので、回す前に確かめておきます。

関係がこじれていて直接やり取りしたくない場合は、弁護士に代理を頼むと、本人どうしが直接話さずに進められます。調停になったあとは、遠方の相続人が、調停委員会が示した案に合意する書面(受諾書面)を出す方法で、期日に出席しなくても調停を成立させられる制度があると京都家庭裁判所は案内しています。

介護した兄弟の貢献(寄与分・特別寄与料)

親の療養看護などで、親の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人には、遺産分割で「寄与分」が認められる場合があります(民法904条の2)。京都家庭裁判所は、寄与分が認められるには、親族として通常期待される程度を超えた貢献が必要で、ほかの相続人と比べて貢献が大きいというだけでは寄与分にならないとしています。

相続人ではない親族(たとえば親の介護をした長男の妻)が無償で療養看護などをした場合は、相続人に「特別寄与料」を請求できる制度があります(民法1050条)。

相続人かどうかで使える制度が違う点は「親の介護を兄弟で分担する」の法律の章で表にしています。

話し合いに期限はないが、10年を過ぎると取り分の計算が変わる

遺産分割の話し合いそのものに期限はありません(民法907条)。ただし2023年4月1日以降は、相続開始から10年を過ぎて行う遺産分割には、生前贈与(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)を反映した取り分の計算が原則として使われず、法定相続分(遺言で割合が決まっていればその割合)で分けることになります(民法904条の3)。

例外は、10年が過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割を申し立てていた場合などです。法務省の資料によると、10年を過ぎていても、相続人全員が合意すれば、貢献や贈与を反映した割合で分けることはできます。

2023年4月1日より前に始まった相続にもこのルールは適用されますが、猶予があります。期限は「相続開始から10年」と「2023年4月1日の施行から5年」のうち遅いほうです。自分の家がいつまでかは、弁護士・司法書士に確認してください。

「親の介護をした分を反映してほしい」「兄だけ家を建てる資金をもらっていた」といった話がある家は、10年が過ぎる前に話し合いをまとめるか、家庭裁判所へ遺産分割を申し立てておくと、その事情を取り分に反映させる道が残ります。

まとまらない間も、相続登記の義務は3年で来る

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内の相続登記の申請が義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。遺産分割で実家を取得した場合は、成立した日から3年以内に、その内容に沿った登記も要ります。

まとまるまでの間は、法務局に申し出る「相続人申告登記」で基本の義務を果たせますが、効果は申し出た本人だけで、これだけでは実家を売れません。手続は「親の実家の名義変更(相続登記)を自分でやる手順」の相続人申告登記の章で説明しています。

出典:e-Gov法令検索「民法」第904条の2・第904条の3・第907条・第1050条、法務省民法・不動産登記法改正の資料(具体的相続分による遺産分割の期間制限)、同「相続登記の申請義務化に関するQ&A」、京都家庭裁判所「遺産分割調停」のQ&A(Q2〜Q4・Q15)(いずれも2026-11-04参照)

遺産分割協議書に書くこと

話し合いで決めたことは、遺産分割協議書にまとめます。決めておく項目は次のとおりです。

決める項目書くこと
誰の相続か亡くなった方の氏名・死亡日・最後の住所と、相続人全員で協議したこと
実家を誰が取得するか取得する人の名前と、取得する不動産。不動産の表示は登記事項証明書(登記簿)のとおりに書く
分け方の種類現物分割・代償分割・換価分割・共有のどれか(組み合わせなら財産ごとに)
代償分割の場合代償分割として払うこと、代償金の額・支払期日・支払方法
換価分割の場合売却の進め方(誰が手続きをするか)と、売却代金から差し引く費用、代金を分ける割合
共有の場合各人の持分の割合(住む人・費用の負担・いつ分けるかの取り決めも書面に)
ほかの財産預貯金・株などを誰が取得するか
後から見つかった遺産協議書に書いていない遺産が後で見つかったときに、誰が取得するか、またはあらためて協議するか
署名と押印協議した日付と、相続人全員の署名。印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、印鑑証明書を各1通付ける

実印として登録できる印鑑の大きさや材質は、住所地の市区町村が決めています(例:東京都中央区は、印影が一辺8mmの正方形より大きく、25mmの正方形より小さいもの)。

新しく印鑑を作って登録する場合は、登録できるかを住所地の市区町村で確認してください。

法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページには、遺産分割による相続登記の申請書の記載例と、遺産分割協議で決めた場合の相続登記の手続を説明した案内(PDF)へのリンクがあります。

不動産の書き方や、登記の申請に必要な書類は「親の実家の名義変更(相続登記)を自分でやる手順」の必要書類の章で説明しています。

出典:法務局「不動産登記の申請書様式について」、東京都中央区「印鑑登録」(いずれも2026-11-04参照)

話がまとまらないとき(家庭裁判所の調停)

家庭裁判所の遺産分割調停

兄弟の話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられます。相続人の1人または何人かが、ほかの相続人全員を相手方として申し立てる手続です。

調停では、調停委員が双方から事情を聞き、必要に応じて資料の提出や遺産の鑑定をしたうえで、それぞれがどの分け方を希望しているかを聞き、解決案を示すなどして合意を目指します。

調停が成立しなければ、自動的に審判の手続に移ります。審判では、裁判官が遺産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・生活の状況などの事情をすべて考慮して分け方を決めます(民法906条)。

代償分割(実家を取得した人がほかの兄弟にお金を払う形)は、特別の事情があると認められる場合に審判で命じることができます(家事事件手続法195条)。

どの分け方になるかは、遺産の内容や兄弟それぞれの事情で変わります。

京都家庭裁判所は、調停では葬儀費用や使途不明金なども含めた全体的な話し合いができる一方、審判では原則としてそうした付随的な問題を扱えないと案内しています。葬儀費用の精算を兄弟でどう決めるかは「親の葬儀費用は誰が払う?」で説明しています。

調停にかかる期間の目安

最高裁判所の資料によると、令和6年(2024年)に終わった家庭裁判所の遺産分割事件は15,379件で、平均の審理期間は12.1か月、期日(裁判所で話し合う日)は平均4.7回でした。1年を超えたのは約3件に1件(5,002件、約33%)です。

※約32%は、審理期間が1年超2年以内の3,575件・2年超3年以内の958件・3年超の469件を合計した5,002件を、15,379件で割った値(32.5%)です。

調停や審判になるのは、遺産が多い家だけではありません。令和5年(2023年)の司法統計では、審判や調停で分け方が決まった遺産分割事件7,234件のうち、遺産の額が5,000万円以下だったのは5,614件(約78%)で、1,000万円以下も2,448件ありました。

弁護士・法テラスへの相談

相手方との交渉や調停の代理を頼めるのは弁護士です。費用が心配な場合、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談は、収入と資産が一定額以下であることなどが条件で、公式ページでは相続も相談内容の例に挙がっています(同じ問題につき3回まで)。

基準の金額は地域や家族の人数で変わるので、法テラスの公式ページで確かめてください。

出典:裁判所「遺産分割調停」、e-Gov法令検索「民法」第906条・「家事事件手続法」第195条、京都家庭裁判所「遺産分割調停」のQ&A(Q9)、最高裁判所「事件類型別平均審理期間等(家事事件)(令和6年終局事件)」、同「令和5年司法統計年報 3 家事編」第52表、法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」(いずれも2026-11-04参照)

親の一方が実家に住み続ける場合(配偶者居住権)

父が亡くなり、母が実家に住み続ける、という場合に使える制度が「配偶者居住権」です(2020年4月1日施行)。実家の所有権は子が取得し、母はその家に住み続ける権利を持つ、という分け方ができます。

法務省は、配偶者居住権の評価額は所有権より低くなるため、配偶者が預貯金などをより多く取得しやすくなると説明しています。設定するか、評価額をいくらと見るかは、弁護士や税理士に相談してください。

これとは別に「配偶者短期居住権」もあります。亡くなった時点でその家に無償で住んでいた配偶者が、遺産分割で実家を誰が取得するかが決まる日まで、少なくとも相続開始から6か月は無償で住み続けられる権利で、登記はできません。

出典:e-Gov法令検索「民法」第1028条・第1030条・第1031条・第1037条、法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます」(いずれも2026-11-04参照)

実家を売って分けるときの相談先

換価分割で実家を売る場合や、代償金の額を決めるために売却額の目安を知りたい場合の相談先の一つとして、次のサービスがあります。

PR・買取の相談

相続の窓口(相続した不動産の買取)

相続した不動産を自社で買い取る不動産会社の相談窓口(公式ページでのサービス名は「ラクウル」)

  • 方式会社が直接買い取る
  • 運営株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業 国土交通大臣(1)第10311号)
  • 相談・査定無料(現地調査を含む)
  • 相談方法電話・メール・LINE・チャット・オンライン面談
公式ページに書かれていること
  • 相談費用・現地調査・買取査定は無料
  • 相続財産で揉めている最中でも相談できる
  • 遠方からでも、電話やオンラインで売却の相談ができる
  • 日本全国の相続不動産を買い取るとしている
知っておきたい点
  • 兄弟の話し合いの取りまとめや遺産分割協議書の作成は弁護士・司法書士などの仕事で、この会社に頼む内容ではない
  • 買取は会社が買主になる売り方。仲介で売り出す場合と買取の比べ方は「相続した実家は仲介と買取どっち?」で説明している

買取の査定額を、仲介で売り出した場合の査定額と並べると、兄弟で「いくらなら売るか」を決める材料がそろいます。

相続の窓口の公式サイトを見る

買取の会社に相談するときは、次の点を比べると判断しやすくなります。

  1. 買取価格と、仲介で売り出した場合の査定額との差
  2. 代金を受け取れる時期(換価分割では、兄弟に分ける時期と確定申告の時期にかかわる)
  3. 引き渡したあとに不具合が見つかったときの責任(契約不適合責任)を、売買契約書の特約でどう決めるか
  4. 家財が残っている場合に、そのままで引き取ってもらえるか

※サービスの内容は、相続の窓口の公式ページ(souzoku-no-madoguchi.net)の記載によります(2026-11-04参照)。買い取れる物件かどうかや申込の条件は、申し込む前に公式ページで確認してください。

兄弟の間で取り分や分け方の争いがある場合の相談先は弁護士です。売る・貸す・置いておくの比べ方は「実家が空き家になったらどうする」、実家を片付けて売るまでにかかる費用の目安は「遺品整理・実家じまいの費用を計算」で出せます。

よくある質問

兄が住んでいる実家について、家賃を請求できますか?

民法249条2項は、共有物を使う共有者は、別に取り決めがなければ、自分の持分を超えて使っている分の対価をほかの共有者に払う義務があると定めています。ただ、親と同居していた兄弟が、親が亡くなったあとも実家に住み続けている場合は、遺産分割が終わるまでは無償で住める扱いになることがあり、請求できるかは事情で変わります。請求できるか、いくらになるかは、弁護士に相談してください。

実家の評価額は、どの価格を使えばいいですか?

法律で1つに決まってはいません。京都家庭裁判所の案内では、調停では基本的に当事者が合意した金額で進め、例として固定資産税評価額・相続税評価額・公示価額・不動産業者の査定額を挙げ、合意できなければ鑑定をするとしています。兄弟全員が同じ資料(課税明細書と査定書など)を見て決めるのが出発点です。

親が亡くなって10年を過ぎたら、もう遺産を分けられませんか?

分けられます。遺産分割の話し合いに期限はなく(民法907条)、10年を過ぎて変わるのは取り分の計算です。生前贈与や介護などの貢献を反映した計算が原則として使われず、法定相続分(遺言で割合が決まっていればその割合)で分けることになりますが(民法904条の3)、法務省の資料によると、相続人全員が合意すれば貢献や贈与を反映した割合で分けることもできます。

遺言と違う分け方をしてもいいですか?

相続人全員が合意して遺言と違う分け方をした場合の税の扱いを、国税庁 No.4176 が説明しています。全部の遺産を相続人の1人に与える遺言の例で、相続税は分割協議の内容で計算し、遺言で受け取るはずだった人からほかの相続人への贈与税は課されないとしています。遺言執行者がいる場合や相続人以外の人への遺贈がある場合など、この例に当てはまらないときは、弁護士か税務署に確認してください。

代償金に贈与税はかかりますか?

国税庁 No.4173 は、遺産分割で代償分割をした場合、代償金を相続税の課税価格の計算の中で扱うとしています(払う人は取得した実家の価額から代償金を差し引き、受け取る人は代償金を加える)。代償金を現金ではなく土地などの資産で渡すと、渡した人に所得税がかかることがあります。贈与税が問題にならないかを含め、金額の決め方や税の扱いは税務署か税理士に確認してください。

分け方の比較を見る